SIMPELT LIV

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# 先生は私ではない

 

彼の家族の中にはボランティア活動をしている人がいます。

先日、彼はその人からある事を頼まれました。

 

折り紙教室を開いてくれないか。

 

スウェーデンには沢山の難民が来ており、その数は相変わらず増加の一途をたどっています。皆命の危機から逃れる為にやって来ています。地震然り、日本は天災に見舞われる事が多く、そういった意味での危機感はあります。最近では北のあそこの情勢が気になるところですが、家族が誰かに殺された、爆弾が近所に落ちて来たという状況にはなったことがなく、ニュースを見てもなかなか想像に限界がありました。ところがそういった経験をして逃れて来た人々と実際に会ってみると、急に現実味がわいてきます。といっても想像の域は超えず。普通ならば経験しなくてもいいひどい状況に置かれていた彼らと私との差は、生まれた場所が違うだけです。だけ、と言いながらそれがどれほど大きな違いなのか...。色々考えさせられますが、そんな難民のなかでも家族を失ったり一緒にいる事が出来ずに一人で移住した子ども達も大勢います。

 

前置きが長くなりましたが、今回の依頼はシリアとアフガニスタンから来た14才〜19才までのそういった子達の為に折り紙を教えてくれないか、とのことでした。

 

私は人前で何かするのは好きではありません。それを知っていた依頼人は、折り紙好きな彼に頼みました。よくおわかりで。

 

当日が近づくにつれ彼も緊張してきたようでした。なので会の前日に段取りを確認。私はアシスタントとして彼の指示するタイミングで資料を見せたり、黒子の練習に徹しました。

 

当日。

参加者は総勢20名でした。

始まる前まで私の廻りには人が集まっていましたが、彼が先生だとわかると意表を突かれたようでした。あれ?先生は日本人じゃないの?ってそりゃそうですね。

 

ちょっとした折り紙の歴史や和紙、折るコツなどを説明し、鶴と箱をみんなで一緒に折りました。

 

折り紙会

 

折り紙は高いので、A4用紙を使用。

 

器用な子は飲み込みが早く、特に教えなくてもスイスイ進んでいました。反対にそういった事が苦手な子もいましたが、誰も途中で投げ出さずに熱心に挑戦していました。とても喜んで取り組んでくれたのと同時に、自分でも出来たという結果に驚く少年少女。母国の文化に興味を持ってもらえる事は私にとってもとても嬉しいものでした。

 

全員が箱と鶴を折り終わり、会もお開きになる頃。

一人の少年が私のところに来て言いました。

 

僕の名前を日本語で書いてくれないか、と。

 

喜んで!と彼の名前をカタカナで書いたところ、僕も僕も!と数名が並び始めました。そうこうしていると、今度は日本語のアルファベットを全て書いてくれとリクエストが出始めました。

えっと...全てというと46文字の平仮名とカタカナ...?

90以上あるけどどうする?と一応聞いてみると、いやいやアルファベットだよ、ABCとかの!と言われました。私が理解していないと思ったのでしょう。いや、それが90以上あるんだよ...と申し訳なさそうに再度伝えると、彼は一言。

なんてクレイジーなんだ!

あと漢字っていう文字があってね、それはもういくつあるのか私にもわからない...と付け加えると彼はもう言葉すら発さず目を丸くしていました。結局彼はあきらめましたが、私からしたらアラビア語も相当クレイジーだぞ...。

 

文字が落ち着くと次は箸の持ち方を教えてと言われました。

約半数の少年の体には既にタトゥーが派手に彫られており、見た目だけで言うとギャングです。でも熱心に箸を練習したり文字を書いてみたりする姿は純粋な少年の姿であり、とても微笑ましいものでした。

 

以前よりは穏やかな生活ができると言っても、文化も言葉も違う国では新たな問題や軋轢もあることでしょう。平和な時間を一緒に過ごせたほんの数時間。小さな世界もなかなか悪くないな、と思った折り紙会でした。

 

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